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リハビリの専門性を老健施設で大いに発揮して めざそう!リハビリの達人

リハビリの専門性を老健施設で大いに発揮して めざそう!リハビリの達人
撮影◎池田昌康 (2009年4月10日公開)


老健施設ができて約20年
高齢社会に必要な生活リハビリ
これから若いリハビリスタッフとがっちり手を組んで高齢者のケアの質をバージョンアップするとき
全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会に所属する学校の卒業生の多くが、老健施設に就職しています
老健施設は医師、看護師、PT・OT・STのリハビリテーション専門職、そして介護福祉士などケアスタッフがサービス利用の方々の個別性を重視し、それぞれの専門性を活かしてチームでケアするところ。これが他の施設には見られない老健施設独特のダイナミズムです。そのほうがもちろん高齢者にとって安心であるし、専門職にとっても互いに刺激し合ってさらに専門性に磨きがかかります
ぜひ活気ある老健施設をのぞいてみてください
大歓迎です


老健施設のリハビリ その専門性が育つ環境を

川合秀治 全老健会長(以下、川合) 介護老人保健施設(以下、老健施設)は、介護を必要とする高齢者にリハビリテーション(以下、リハビリ)をはじめとしたケアサービスを提供する施設です。たとえ障害をもっても、いきいきとした生活ができるように可能な限り支援しています。老健施設では、リハビリの専門職種、医師、看護・介護職、支援相談員、ケアマネジャー、栄養士などのスタッフが、それぞれの専門性を発揮しながら、チームでサービスを提供しています。高齢社会になって、高齢者のリハビリがますます注目されています。特に老健施設だけで行われている認知症短期集中リハビリはその有効性が明らかになって、大きな話題になっています。老健施設はこうしたリハビリの中心を担う施設です。

才藤栄一 全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会会長(以下、才藤)
 われわれリハビリの専門職を育てる側からいわせてもらうと、老健施設は大きな就職先と考えています。学生は卒業してだいたい40年働くということを前提に、彼らが40年間やっていけるように育てています。もし20年くらいで食べていけなくなるということでは困ります。それを考えて学校の数、教員の数、そして教育内容を考えなくてはなりません。いずれにしろ老健施設はこれから大きな“市場”になるので、PT・OTが老健施設にうまく就職できることを願っています。ただ、老健施設のリハビリは病院のリハビリとどう違うのか、老健施設のリハビリの専門性が育つような環境づくりを期待しています。

「一人職場」も解消 生活リハビリを追求

川合 よくリハビリは急性期、回復期、維持期と分けられます。急性期、回復期は病院で行いますが、維持期は老健施設が担当しています。以前、これはわれわれだけの思い上がりと気づいたのですが、「維持期リハビリ」を「生活リハビリ」と考え、生活リハビリはすでに定着している言葉と思っていたところ、ある急性期病院の職員からは「生活リハビリって何ですか? それは学会では認知されていませんよ」といわれました。

われわれは「維持期」というものをもっと前向きに考えています。生活を維持向上させていくためにはどういうリハビリが必要なのか。障害側のリハビリはこれまで急性期で一生懸命やってきたかも知れませんが、いままで使っていなかった障害のない側のリハビリをどうするかです。いままで右手でお箸を持っていた 人が左手でお箸を持つのは70歳を過ぎた 人にはむずかしい。ではどうするか。

左手でも先割れスプーンで食べられるように、障害側はお皿がずれないように押さえるリハビリをする。そういうようなリハビリがわれわれの考える生活リハビリではないのかと思います。これはユニバーサルデザインが現場から出てきた発想とよく似ています。

すなわち若い人を元に戻すリハビリとは異なって、高齢者が残された人生で自分がやりたいことを少しでも実現させること、それが「生活リハビリ」です。

才藤 やっぱり「生活」といってもみんな生活しているので、生活の専門家という言葉は使いづらいですね。したがってその科学的根拠をもつことが大事で、生活リハビリがより科学的になってくると老健施設のリハビリはより独自性が明確になるとともに大きなフィールドに広がっていくでしょう。

かつて老健施設はリハビリスタッフにとって「一人職場」になると心配され、卒業生はまず病院に入ってそれから老健施設に行くというケースが多かったのです。新卒の新人にとって先輩は非常に大事で、その指導・助言によって専門職として育っていきたいと考えるからです。しかし、そろそろ「一人職場」も解消されてきて、ベテランの中堅層が育ってきたようですので安心しているところです。

医療でも福祉でもないが 医療でも福祉でもある

川合 昭和60年の厚生省(当時)の中間施設懇談会で「医療でも福祉でもない、そして医療でも福祉でもある」という中間施設構想が生まれて老健施設ができました。そのときのキーワードはリハビリを通じて在宅復帰を図るというもので、まさに老健施設にとってリハビリは大きな柱の1つです。われわれはこの理想に燃えました。しかし、しばらくの間はどうしてもリハビリスタッフが足りない時代が続き、まして「一人職場」では新人の採用はむずかしい状況でした。そこで「学生さんに対してわれわれはアプローチしてきたのか」という反省の声が上がり、それから全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会ときちんと連携を保って、ご理解をいただくこととなったのです。

才藤 当協議会はこれまで緩やかな団体でしたが、ここ何年かで流れが変わりつつあります。新しい学校もできてきて、場合によっては共倒れになるような心配もあります。リハビリのニーズが先行して、その8割が40歳以下という若い構成となりました。こうした若い人たちが育ってきたときに、かつてのように師匠の背中を見て育つというような状況はなくなってきています。老健施設に勤める人も「一人職場」ではなく複数のリハビリ職の時代になってきて、その専門性を高めるためのひと工夫が必要ではないかと感じます。

2040年頃までは ニーズは急増する

川合 高度経済成長時代から昭和60年代までは医療も福祉も報酬に対する利益率もさほど心配する必要はありませんでした。ところが2回続きの介護報酬のマイナス改定でとても経営的には厳しい時代を迎えています。2年前の介護報酬改定では、認知症の短期集中リハビリ加算が付きましたが、わずか60単位です。しかし、この認知症のリハビリはわれわれの調査研究で大変に効果があることが実証されました。今後、こうした非薬物療法は有力な方法になっていくでしょう。そのためにもリハビリスタッフの充実を図っていかなければなりません。

才藤 2040年頃までは確実に右肩上がりでリハビリの時代が続きます。団塊の世代が後期高齢者となって障害を持つ方が増えると、いかに生活の質を確保するかが大きな社会的課題になります。薬物療法だけでなく、生活の行動を変えるリハビリが必要で、その中心になるのがPT・OT・STといった療法士です。こうした急増するニーズに応えられるのかどうか。学校が増え、教える教員の層が薄いといった問題や、学校も文部科学省系、厚生労働省系があり、2、3、4年制があって今後も整理される見通しもないという状況は しばらく続くでしょう。

川合 高齢者リハビリの魅力というものをわれわれは強く感じています。ぜひ若い人にこの領域にチャレンジしてほしいと願っています。今後、病院で行われる健康保険(医療保険)のリハビリは徐々に提供の範囲が狭くなる傾向がある一方、老健施設のリハビリは広がっていくでしょう。

地域のリハビリの拠点 ダイナミックな魅力

才藤 そこで何をしなければならないのかといえば経済性とのバランスでしょう。キーワードは認知症のリハビリをどうするかです。それからチームワーク、維持期という概念、終末期という概念などです。リハビリを狭く捉える一部の人たちは、「変わるのがリハビリだから、変わらないのはリハビリではない」という考え方をしますが、もうちょっと広く捉える必要があるでしょう。

私は老健施設なりの評価のシステムを持つよう、客観的な指標がほしいと思っています。行動の評価ということはむずかしいのですが、たとえば転倒予防について考えてみれば、監視カメラを24時間回して細かくして分析すれば、病院とは違った老健施設なりの研究成果が出せるでしょう。そういう科学性を高めていただければ、われわれも胸を張って学生に「老健施設で頑張ってみろよ」といえるでしょう。

川合 老健施設は施設内のリハビリだけでなく、通所リハビリや訪問リハビリなどを通じて地域のリハビリセンターの機能を持っています。その意味ではダイナミックなリハビリのフィールドがあるという魅力があります。ぜひ若い人にわれわれと一緒に汗を流してほしいと願っています。

本日はお忙しいところありがとうございました。

(役職等は2009年4月10日公開時点のものです)